キラキラ/やまうちあつし
の人は呼びかけたのだ
これまでどこにも
なかった呼び名で
(おいで、キラキラ)
呼びかけられたものの内側で
光が一瞬、小さく弾ける
そしてゆっくり
その人の腕の中へ
抱き上げられた肩越しに森を眺めて
耳の長い生き物に変わった
辺りは薄暗闇に包まれて
空では星が瞬きを始めていた
森は静かに深く
巣立って行った子どもらの
行く末を見守っていた
こうして名前のあるものと
ないものは分けられる
誰の体にも
このような話は宿っているが
多くの人はうっかり忘れている
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