花びらなら土に帰す/アラガイs
寒さが増せば増すほど秋に植え替えた植物たちの悲鳴が気にかかるものだ
邪魔な雑音に慣れた耳が他人から発せられる温もりに感じられるように
そして居住する家賃も安くなれば怪しい人物が住み着いてくるのは致し方ないと教授は言う。
何事も吸い込み過ぎては良くない
あたりまえなことだがこの鏡のような世界を眺めていると、事実奇妙な人間ならいくらでも存在するのだ。
一階に越してきた子連れの夫婦は十五歳くらい年が離れ、若い女の方は栗のような大きな瞳に色白な肌をしてはいるが、けっしてふくよかな体型だとは言い難い肉の付き方に見えた。なによりも前屈みに肩をすぼめて歩く、その姿勢が肉の表面をだらしなく見せる
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