cocoon/うみこ
 
裏山の防空壕の天井からは木の根がたくさん突き出ていた
入り口の高さは七十センチくらいで、湿っぽくて暗かった
近所のお爺さんから、近づいてはいけないと言われた
だけど、
小さかった僕らは友達三人でよく頭だけ突っ込んだ
真っ暗な防空壕に頭を入れると、とても緊張した
じっと耳を澄ましても
周りの音があまり聞こえなかった
頭を突っ込んでいるとき、僕らは無言だった
その中で、
互いに目を合わすこともなかった
ただ、並んで奥のほうをじっと見ていた
なにかあるわけじゃなかった
もちろん、
どこかへ通じているわけでもなかった

最近になって、河原を一人で歩いているとき、
そんな昔
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