手紙/あおい満月
線になる。
私には子どもは居ないが、
子どものなかの無限に拡がる小宇宙に
いつも耳を澄ます。
子どもはいつも、
私が今まで読んだことのない
詩や物語を教えてくれる。
そこにはいつも小さなかなしみと、
大きな喜びがある。
私は子どものことばを、
水のように取り込む。
そうしてネルのような布で濾して、
きらきらと生きをすることばを
えらぶのだ。
***
やじろべえが、
私の頭を次々と弾く。
はじかれるたびに、
殖えていく。
殖えるたびにことばも殖えていく。
私はそれが嬉しくて、
弾かれる旅をするために
電車に乗る。
駅のホームのざわめきこそが
私の渇いた喉を潤す。
私は旗になって伸びていく窓の明かりを
ごくりと一つ飲み干した。
****
星の風に包まれて、
子どもたちは眠っている。
明日もまた、
私に物語をお話ししてね。
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