落ちた/六九郎
ら自爆した
村上春樹はやれやれと言うように首を振りながら落ちていった
SF作家だったお祖父さんは奇声を上げながら落ちていった
たまたま露天風呂に浸かっていた俺はそのまま青空へ吸い込まれた
ひとかた落ちきって静かになった頃、小さく身震いするように地面が揺れた
どこかにしがみついていたか引っかかっていた人や虫やなんやかやがぱらぱらと落ちていった
地下ではいくばくかの人と動物達とたくさんの虫たちがまだ息をしていた
その中で飲み水にありつけたのはほんの一握りだった
まだ木々は茂っていたが葉も種も実もぱらぱらと落ち続けていた
どの木にも鳥たちや虫たちがたかっていた
地球は久しぶりに静寂を取り戻し空はどこまでも青く澄み切っていた
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