空き樽は音が高い/涙(ルイ)
 

油断はできませんでした
いつ何時 攻撃されるかわかりませんでした
ずっとひとりでした
ひとりでずっと 緊張していました
だからいまでも 他人が苦手です
やさしさに怯えてしまうのです
何かあるに違いないと
ついつい勘繰ってばかりなのです
すみません ごめんなさい
あなたのせいじゃないんです
あなたが悪いわけじゃ
決して決してないのです
私の中のわたしが どうしてもそれを受け入れられないのです
拒絶してしまうのです
すみません
本当に あいすみません


ひとつ疑いだすと あれもこれも何もかも怪しく思えてくる
あの人もこの人もみんな人に非ず
みんな鬼の形相をしている
しているように見える私が
一番 人に非ず


一寸先から五里もその先も 真っ白な霧闇の中
どう生きていったらいいのさえも まるで見当がつかず
手探りで一歩一歩 模索しながら歩いていくしかない
そんな人生を 私は生きているのです

生きていくのです



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