歩み/鷲田
 
に落ちているもの
あるのは優しさというプレゼントが一つ
誰からの届け物だろう
私の過去の落とし物だっただろうか

朝が欠伸をし
昼が眠気を誘い
夜が夕方を覆い隠し
明日への準備をする頃
どのように感情は映し出され
世界の目は空間を定義するのか

誰かを持つ人への想いを可視化して
想いと言う物体に所有権を見出し
疑いの本能を刺激する危うさを抑え込めるのであれば

所有権はどこにもなく
所有権は全てにあり
裁く者は全てを裁き
裁く者は全てに裁かれる
そうして各々が作り出した個が私達を解放し
名が固定化される

振り返ると歩みは
まるで永遠に過去を忘却している古跡
霧がかった記憶は
薄ぼやけていて、断片的で
一貫性が無く、気紛れである脳髄の僅かな欠片
割れたビンのように
叩かれると地面に飛び散るガラスの結晶

道端に落ちているもの
あるのは優しさというプレゼントが一つ
誰からの届け物だろう
私の過去の落とし物だろうか

その中の忘れがたき思い出よ
私はまだ歩いている
失った身体を取り戻すために
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