時計の森/レタス
夜に濡れたサックスの音色を聴けば
漆黒の街に出かけたくなった
その交差点は左だけが何時も赤だったので
曲がった事はない
カチカチと聞こえる音が脈拍と呼応したので
信号無視をして左に歩いた
闇はより深くなり
鼓動までもが高鳴っていった
たどり着いたのは深い森の入り口だった
ぼくは戸惑いながらも
足が自然に森に向かってゆく
ぼくが足を踏み入れた瞬間に
木々たちは時計の文字盤の眼を開き
一斉にカチカチとぼくの聴覚を奪った
その鋭さはは心臓を貫き
命を狙う
それでも正確な文字盤の針は美しく
ぼくを受け入れてくれた
この夜の森からは帰れない
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