錆びた街/レタス
もろみの薫り漂う街に住んだことがあった
二両編成の電車が走る街
午前2時に仕事を終えて
少しアンモニア臭い
チャルメラを食べる儀式が日課だった
あらゆる生物は眠りにつき
ぼくとチャルメラだけが起きていた街
どこからかバンドネオンの響きが聞こえたような錯覚が
夜中の街に流れ
港に消えてゆく
ラーメンを食べ終えたぼくは
ふらつきながら
もろみの香る路をたどりながら
布団に倒れ込み
明日の朝6時を待つ
360日をそうして過ごした一年が懐かしい
あのバンドネオンは幻聴だったのだろうか
やがてスニーカーの紐を締めて逃げ出した街
いまもそこにはチャルメラとバンドネオンは健在なのだろうか
蝙蝠だけが知っているのかも知れない
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