ペガサス/光冨郁也
 
と。
塾の先生が心配して、
顔をだし、声をかけてくれても、
わたしは黙って、首をふり、
あいまいに微笑むだけ。

濡れた前髪からは、
しずくが落ちる。
足元の、
水たまりに映る、
空が小さくゆれる。
冷たい空気の中でも、
ひとりで笑っていた。

スーツの上の、
コートのすそを気にしながら、
公園の中に、
しゃがみこみ、
濡れた傘を肩にかけながら、
地面に小石で、
落書きをして遊んでいる、
わたしは、無力な子どものようで、
いつまでも、
だれもこないことを祈っている。

それでも、
あの雨雲の上は、
晴れているはずで、
羽根を付け足し、
地面の、
ペガサスが、
太陽に向けて駆けのぼる。

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