森の恋人/レタス
深い森にわけい入って
静かに 静かに 息を吸ってみた
甘やかな熊笹の香りが
肌を包み
遠い記憶を呼び覚ます
ぼくは此処にいたんだ
ミズナラの巨木のきみが
ぼくを呼んだから
きみの傍にやって来た
かたわらの流れに
ヒメマスたちが
舞い踊り
祝福を待っていた
耳をそばだて
きみの年輪を聞いてみる
だが、きみは答えなどできないという
少しだけ寂しいけれど
それは仕方のないことだ
冬が来る前に
きみに逢ってみたかった
きみの樹肌に耳をあて
愛していると
囁いた
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