ささやかな羽音/
千波 一也
夏のおわりの
アスファルトのうえに
蜂がひとつ
死んでいた
もう、
怖くもなんともない有様で
蜂がひとつ
死んでいた
この蜂の持つ毒針は
柔肌に痛みと腫れをもたらすに十分で
甚だ脅威であるけれど
それは
生命を有してこその脅威である
つまり
生きるということは
脅威にほかならない、ということであろうか
夏のおわりの
アスファルトのうえで
わたしはおもう
わたしの毒針について
その
脅威について
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