叔父さんに/イナエ
うに
同じ線上を西へゆったりと去っていった
遠くの方で
砲丸を地の中から撃ち出したような音が伝わって
夜空に赤い煙の塊ができたけれど
赤い灯の点滅は軌跡を乱すことなく進んでいった
小さな祠に 叔父たちの無事を祈りながらも
赤い灯の自信に満ちた点滅を見ていると
体の奥深く芽生えた畏れに ますます寒く震えていた
その夜
叔父は自ら作った防空壕から出した首を失った
叔母はこの不可解なできごとを目にして
それでも気丈に幼い従妹の顔を胸に抱き
長い長い空襲に堪え
翌日 焼け落ちた家の周りを探しまわったが
見付けられなかったと聞く
あれから七〇年
叔父さん 炎の中で失った首は
その後 見付かったでしょうか
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