看板と表札/為平 澪
 
の持っていない、人より大きな、人より特殊な看板を
背負って肝心の「 表札 」を無くした者もいるのに
夜のうわべを飾り続ける華やかな看板

グランドホテルの看板が これからどんなにきらびやかに大きくなっても
そこに自分の名前を一生刻んで住み続けることも
親の仏壇を背負い込むこともできないのに
エライ人は看板の作り方や経緯や光具合が肩書き文字が大好きで
何処からともなく看板の 大きさめがけてやって来る

看板の真下から伸びた影の指す先に崩壊していく私の家庭
日照権すら剥奪された暗くて黒い表札たち

私の家族や本名をよんでほしいといいながら
腐った蒲鉾板のような表札が
誰にも磨かれることもなく
私の帰りを独り待つ
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