蝋館/アラガイs
 

小鳥たちの鳴き声
ここはドームだろうか
不思議と羽の音がしない
首筋から胸もとにかけて
蝋の塊は溶けて垂れていた
とっくに扇風機は止まっているのだ
目が覚めるのはいつもこんな調子で
湿った布地に絡まれ
防虫剤の味で舌は灰に焼かれる
起き上がると分泌腺から汗が吹き出した


冷たい水にあたるまで台所で顔を洗い口に含む
その前にもトイレに向かわなければならない
台所の温度は常に三十度を超えていた
(わきの下から股関節にかけて、脂身の皮膜が一枚重なるようだね)
窓は開け放たれた網戸
しばらくするとうんちの匂いがした
(あれ、流し台の残飯か隅のゴミ袋だろうか

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