鳥とテレビ/馬野ミキ
毎日深刻な顔をしている
それが仕事なのだ
台風が来れば喜んで現場のレポーターは一番雨風の強いところに出向き
ヘルメットをかぶって今にも吹き飛ばされそうな演出をしている
毎年、観測史上まれに見る天候に見舞われている
きっとたいしたことを観測してこなかったんだろう
俺は寝転んでけつをかきながら彼らを見ている
仕事をしていない俺が仕事をしている彼らを毎日見ている
そう 彼らは金を稼いでいるのだ
なぜなら俺と違って彼らは仕事をしている
テレビを見ているだけの俺は金をもらえない
テレビを見ることはバカにでも無能にでもできることだ
テレビを見ている人間を見ているとたいてい馬鹿か無能に見える
俺はさきいかをしゃぶりながらリモコンを押す
オナニーを終えもう今日することはないのである
俳優、歌手、アイドル、アナウンサー、落ちぶれたタレント、一発屋
様々な人が仕事をしている
皆、金を稼いでいる
鳥は空を飛んでいる
俺は何もしない。
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