日常/ららばい
 



祖母が死んだ時
母はさめざめと泣いた
受話器を持った左手をだらんと垂らし
私の存在など忘れてしまったかのように
わんわんと泣き続けるものだから
私は6畳の部屋をぐるぐる歩いた
泣かないで泣かないで泣かないで
母の嗚咽はレコードのように止まらず
私はいつまでも歩き続けた


大人になったらこの胸のもごもごした感じは
なくなるのだろうと思っていたが
大人になった私は相変わらず
―いや更に必死に
何かをごまかしながら歩いている



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