白の誕生日/光冨郁也
二月十三日、
雪が降るのを、
自室で待つ。
母から贈られた、
防寒コートをきて、
窓の向こうから、
薄い光がさしている。
コートの上に、
毛布をかぶり、
書いたばかりの、
自分の手紙を読み返す。
ひとりで、
グラスについだ、
リキュールを飲む。
冷めた空気が、
わたしをつつみこんでいく。
十年前、
わたしの上に、
降り注いだ雪は、
決して美しいだけの、
冬の情景ではなかったが、
ハクレンガの屋上から、
地平につもる雪を、
震えながら、
見つめつづけていた、
二十歳の誕生日。
それでも待っていた、
雪はまだ降らないのかと。
暖房をいれず
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