夏、と言ったら、海/村乃枯草
 

白い砂を見慣れてなかったから
学校のグラウンドの土と似た色をしていて
それはどこかしら
製材所の木屑と似た色だった

私が私を僕と呼んでいた頃
学校の卒業式が終わると
僕らは製材所に集められた
横に寝かされると
丸鋸が迫ってきた
僕の身体は甲高い音を立てた
太さ15センチの角材になった僕は
何者かになったことで私になり
海から遠い丘陵地帯のベッドタウンで
家となった

冬は暖房で家族を守り
梅雨は除湿で家族を守り
暑くなって
家族が冷房のスイッチを入れたとき
丘陵地帯の住宅地の中に
青い海が見えた

ビーチパラソルは無く
海の家もなく
木屑がしきつめられた浜を
内側に住人を抱えたまま
裸の柱の私が
海水に突入していく
これは 夏だ


と言ったら

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