古いレコードを聴いていた(遠い空編)/涙(ルイ)
 
「忘れない……」そう君は云ってくれた。
「あなたと過ごしてきた時間は、どれもみんな大切だから……」と。
けど、本当に忘れないでいることなんて出来るかい。
この先君は僕とはまったく違う種類の人たちと出逢い、たくさんの笑顔や涙を流すだろう。
そしたらきっと、もう僕のことなんか憶えてるはずもないさ。
イヤ、別に君を責めてるわけじゃないんだ。所詮、人間なんてそんなものだろ。
どんなに悲しい出来事があったって、夜、テレビを見てゲラゲラ笑ってるうちに、
昼間にあんなに悲しんでいた理由すら忘れてしまうだろ?
それに、僕らには本当に『大切』なものなんて何ひとつなかったじゃないか。
僕は君に心を隠
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