六月/乱太郎
五感に塩漬けされた記憶の味が
酸っぱくなってゆくようだ
母は既に亡くなり
カビの生えた世間知らずの正義と理想を
空は紐で繋いで晒し者にする
生温い風に扇がれて
都会のビルの間で尾鰭を振っているこの月を
昔の僕なら鬱陶しく感じていただろう
泥船の底が地面に擦り減らされ
嘘の湿度が最高になる
気怠い愛想と夕暮れの雲
溶けたい
溶けることができたなら
記憶を消すことも赦されず
この月はいよいよ僕を捉え運んでゆく
出口のない、入り口も見えなくなった
今では愛おしさすら感じられる
青緑色の迷宮へと
溶けたい
溶けることができたなら
やま
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