バギー/生田 稔
バギー
朝早く起き
幼児の世話
三十年過ぎ去った
食事がすみ
妻が看護師の仕事に
これからのわたしの伝道生活
バギーに子を乗せ
待っていると
山口姉妹が大型の
車で
共々にと
訪ねてくださる
群れという、クリスチャンの集まり
毎日この区域を回る
もう山口姉妹は、われらのもとを去って
共には交わっていない
時折街路で出会ったりする
そのたび声をかけたり
挨拶したりしていたけど
今では、遠目でみて
いずれも近寄らない
去る者は日々うとし
そんな言葉が
永い間バギーを押して
わたしは家々を
回った
山口姉妹には度々
車の世話になったと
娘さんに
ワンピースを、共に選んで
贈った
山口姉妹が去ってゆかれて
あのバギーはだれかに譲った
わたしたちは忘れても神エホバは
決して忘れない
ちょっとした親切で
あったとしても、幼児と伝道して歩いた
あの日々と、山口姉妹を
懐かしく今も思い出す。
戻る 編 削 Point(1)