とんび/
ガト
田んぼの中を
カタコト抜ける電車は
やがて海に出る
終点は港で
そこはふるさとだ
寂れた駅にひとつ
真っ白なベンチがあって
子供の頃の記憶を
日差しが象る
いつかの夏のように
賑わって煌いた記憶を
ベンチも覚えているのだろう
やがて日が暮れると
海を旋回していたとんびが
山の神社に戻ってきて
人の世の不確かさを
それは美しい声で笑う
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