戦慄/イナエ
 
中学生になってはじめて学校へ行った日
いくつかの坂道を登り下りし
いくつかの集落を抜けてたどり着く

坂道は辛かったが 
ところどころに桜が花をつけていて
気分は悪くなかった

集落は緊張した
子どもに噛みつく言い伝えの犬が吠えていたり
何かと噂のある青年が にたにた笑っていたり
それらに目を合わないように急いで通る抜けた

その日 学校は古びた門柱もあたらしく見え
どこか都会風な雰囲気が漂っていた

学級が決まり式も終わったが
遠くから来たものたちは弁当を食べて帰る
ぼくは給湯室に準備された大きなヤカンの
お茶を教室に運んだ
どうしたことか教室は空だった
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