西荻窪深海譚/やまうちあつし
は互いの深海魚を
会わせてみようということに
ここへきて確信した
これこそ運命とでもいうべきもの
私のかわいい深海魚も
丁度そこまでやって来ている
魚もろとも
行けるところまで行こうではないか
勘定を済ませ
表へ出ると日本海溝
私の魚を探していると
背後から女の呼び声
ふりむくと
恥ずかしそうに佇む女の背後に
大型のダンプカーほどもある
巨大な魚の上あごと下あご
それがホッチキスのように
右から左へがばりと裂けて
目はすっかり退化
顔半分は全くののっぺらぼう
私と私の深海魚は
思わず身震いをした
額からぶら下げた電球をチカチカさせて
私のチョウチンアンコウは
私の背後にそっと隠れる
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