のろいのために/片野晃司
 
列車が通過しまして、下り列車が通過しまして、いくつもいくつも通過しまして、終列車過ぎて、次の日もまた次の日も、上り列車も下り列車も通過しまして、幾日も幾月もまつばかり、次の年もまた通過しまして、その次もまたその次もまつばかり、花が咲いてのろいまして花が散ってうらみまして、蛇になるか龍になるか、花が咲き、花が散り、花が咲き、花が散り、松のほかには雪ばかり、梅が咲いて悔いまして、桜が散って悔いまして、転女成仏変成男子、一大三千大千世界のうんたらかんたら。


hotel第2章 no.34 特集「伝統芸能にあそぶ」2014年5月

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