サトリ/Seia
だいぶ先の方に
あかい ひかりがみえます
とはいえ距離感がつかめないので
それは目の前にあるようで
地平線を追い越すようで
ピントが合いません
頼れない自分の記憶よりも
届くかもしれない灯りをつかもうとします
しばらくして振り返ると
枝のない部分だけが視線をまっすぐ通します
肌寒さを隠すために
上着の袖を伸ばしたのですが
あまり聞きたくない音が
ずっと聞こえていた耳鳴りを止めます
気付かないフリはもうやめにしませんか
あかい ひかりが増えていること
それから それから
くるぶしに刺さっているもの
景色が動いているので
身体も動いているはずなのですが
下半身の感覚が薄れて
プールの中をあるいているようで
さきほど振り返ったとき
何か 変わったことはありませんでしたか
あなたは今
森の中にいます
わたしが
あなたにみえますか
あなたは今
どこにいますか
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