なびく丘で/かんな
 

まっすぐに見つめそして反らした

にれは祠に奉られていた
理由を探れば悲しくなるが
目的を探せばあたたかいとおもうと
大人たちにはるは教えた

まて
まっておくれ
離さない手が女を抱き締めて寄せた
知らない何もわかることは出来ないが
互いに歩み寄れる努力をしよう
男と女はただそれだけでいい

母親は目を尖らせて言った
ふつうのふつうの子が良い
父親は興奮ぎみに声をあげた
おまえたちは目を覚ませ

にれは祠に奉られていた
見つけたのがはるだったかもしれない
知ったふうに大人たちは
おとぎ話を並べたがったのだ

鳥居から過去へ行きたいと女は言った
小さな赤子に戻って愛されたいと
鳥居から未来へ行こうと男は言った
一緒に家族になればいいのだと
二人はやっと手を握った
強く強く手を握り大地に向かって立った

ただはるにれが風になびく丘で



戻る   Point(8)