なびく丘で/かんな
まっすぐに見つめそして反らした
にれは祠に奉られていた
理由を探れば悲しくなるが
目的を探せばあたたかいとおもうと
大人たちにはるは教えた
まて
まっておくれ
離さない手が女を抱き締めて寄せた
知らない何もわかることは出来ないが
互いに歩み寄れる努力をしよう
男と女はただそれだけでいい
母親は目を尖らせて言った
ふつうのふつうの子が良い
父親は興奮ぎみに声をあげた
おまえたちは目を覚ませ
にれは祠に奉られていた
見つけたのがはるだったかもしれない
知ったふうに大人たちは
おとぎ話を並べたがったのだ
鳥居から過去へ行きたいと女は言った
小さな赤子に戻って愛されたいと
鳥居から未来へ行こうと男は言った
一緒に家族になればいいのだと
二人はやっと手を握った
強く強く手を握り大地に向かって立った
ただはるにれが風になびく丘で
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