色愛/やまうちあつし
嫉妬は黒ずんでゆく橙である。西の空を焦がしてゆく夕焼けのようにそれは魂に暗闇をもたらすだろう。
喜びはまぶしすぎる黄色い光だ。虫のうちほとんどは目が潰れている。
悲しみはうっすらと青いので、春先に纏うには丁度よい。やがて青さが風にさらわれ、漂白されてゆく。気付けば何も纏っていない。それを忘却と呼ぶ。
あきらめは薄い灰色で、やすらぎは薄い水色だ。日曜の午後はその二つでできている。陽射しの中を走る列車は、各駅停車で実直を届けるだろう。
怒りは熱せられた黒。ぐつぐつと煮え立っている。どの色を加えても、塗り替えられることがない。
やましさは虹色の混合である。渦を巻き、王国の撹乱を思わせる。誠実さ
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