仏様が降らす雪/月形半分子
 
だった。木々が風に揺れ、初雪が降り出すと、どぉぉん どぉぉん と遠くから音がして、リン、リンと鈴の音もした。あぁ、これは仏様のお渡りだ。観音様のお渡りだ。このお空の上を歩いていらっしゃる。仏様が歩くたび、古くなったお空が壊れて降ってくるんだ。

はくらく はくらく はくらく 

どんどん降れ、降れ。壊れろ 壊れろ 灰色空なんてぜんぶ、壊れてしまえ。

わたしは母さんを呼ぶ。雪だよ!雪だよ!たくさん列なして仏様が灰色お空を壊していくよ。
母さんがそれをきいて笑っている。

はくらく、はくらく、はくらく

へのへのもへじを壊して、春よ来い。


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