冷えていく鉄/木屋 亞万
学校へ通い、都会を歩き、恋をして、家族を持ち、仕事をして、そこで出会う喜びと苦しみにもみくちゃにされるのだ。
いつものように充電プラグに接続し、来るべき明日のために、いつも以上に長く充電するように設定しスリープ状態に入った。
それから数時間後に充電は完了し、鉄の身体はぷすんと小さな音を立てた。体内のタイマーが立てた音だった。その音を合図に、身体を構成する金属は次第に熱を失くしていった。外はまだ寒さの残る冬の夜。手足の先から、鉄の体は冷えていった。
ロボットはもう二度と起動することはなく、完全にその機能を消失した。そのロボットは百年目の三月を迎えることができなかった。
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