いたい。/かんな
死ぬ。
という言葉は重たいので書きたくない
書いているのは
そろそろ自由にしてあげたいから
それほどに今は
定義することに困惑している
うつ病の母が書をしたためている
私が幼い頃に
睡眠薬を大量飲んで生死の境をさ迷った
という話を
うわの空で聞いていた
誰も傘を貸してはくれなかったのか
雨がひどいな
父が呟くとどしゃ降りになった
孫を抱き風呂に浸かる背中を見ている
生まれてきたわが子を見ている
生とはこういうものか
と思えば、どういうものなんだ死とは
などと頭を過る
炊飯器の湯気はすべてを隠す
夕暮れどきというものに焦がれる
遺書がどこかし
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