磔刑の丘に/
梅昆布茶
視野の隅
磔刑の丘が緩やかに
空に溶けて行く先には何もない
君の指先は工場で品質を素早く読み取る
精密な器械でもあるが
ときにわたしを虜にしてしまう
哀しく白い造形でもある
時間のなかの小さな違和を検出する
その瞳には歌が流れてゆくだろうか
獣のように垢染みてしまった私は
もはや隠れるすべもなく風に吹かれている
すべての大切なものは必ず失われる
しかしやがて慈雨となって新芽を潤し
春の先触れとなって心に降りそそぐのだろう
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