どこにも書いてないことを教えて/木屋 亞万
 
どこにもない場所を教えて
だれもまだ踏み込んでいない花園に
こっそり招待してほしい
月のなくなる夜でいい
火も電気も眠るころに
しずかにねどこを抜け出して
あなたの闇に逢いに行くから

どこにも書いてないことを教えて
見栄も嘘も日常もネタも思想も芸術も
何でもネットに流れていくから
放流せずに残したままの
とっておきの言葉の花束を
ぼくだけに見せてくれないか
傷つけないように気をつけるから

ぼくだってとっておきをきみに言おう
きみのうなじに口を近づけ
どんな小さな言葉の端も
耳からこぼれないように
この低い声がきみの温度で発酵し
鳥のさえずりになって光る
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