マリエロの海/オダ カズヒコ
 
煮込まれていく

カモノハシとぼくとが
交互に鍋の蓋を開けて仕上がり具合をみると
わっと湯気がキノコ雲のように広がり
キッチンから見える西の空が茜色に染まる
守るべきものと 愛するべきもの全てを
一望のもとに眺めることができた

<女は煮えきったカモノハシの肉を 菜箸の先っちょでまだ執拗につついている>

ぼくはそいつを眺めながら
葉巻に火を灯し
茜色に染まった西の空の意味について
カモノハシと語り合っている

牛乳ベースのスープにレチェの入った女の手料理が
このマリエロの海のように
全てを穏やかに 受け止めるわけではないことについて
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