言葉の切れ味2 迷刀たち/イナエ
迷刀スパイ
ぼくが国民学校に通っていたころ
鉛筆削りや竹細工には
折りたたみナイフ「肥後守」を使っていた
喧嘩のときも肥後守をちらつかせれば相手はひるんだ
その頃
日本では本土決戦が近いとささやかれていた
ぼくは決戦になったら肥後守で相手を刺すのだ
相手はマシンガンを腰だめにしていることも知らずに
そんなことを考える軍国少年だった
学級には
戦闘機の機影で友軍機か敵機か判断できる優れた軍国少年がいて
ある日彼は得意そうに言ったのだ
「昨日 男と女のスパイが晒し者になっていたので
石ぶつけてやった」
ぼくの家は国鉄の線路脇にあって窓から
蒸気機関車
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