冬野/マチネ
 
挫いたかもしれない足を雪につけて
痛みをとりだそうとする
できるような気がする
染み出した汗が白い雪を痛みの色に染めて

  (それはきっと緑だ
   濃い緑
   深く昏い海の底
   滑らかなあの苔の色)

けれど、ようやく痛みが消えた頃、僕は歩けなくなっている。
冷たい土壌に溶け出しつつある枯れたススキの群れに囲まれて、



狐の幼い瞳が見える。
丸い。
黒い。
兎を狙って潜ませた息。

近くで鳥の声が聞こえる。
鋭い。
高い。
波紋が僕の両耳を刺す。

いつの間にか
荒涼とした冬の野原で
どこか知らないところへ浸みこんでいったはずの痛みが
僕の所へ帰ってくる。

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