夜。 クリスマスイルミネーション/梅昆布茶
 

としこおばちゃんは母の姉だ
女子栄養大学を出ていながら
生来の内向性のために
キャバレーの皿洗いをしていて

でも毎年クリスマスケーキを
調達してくれた

そんなのっそりしたおばちゃんを
叔父達はひそかに熊とか呼んでいた

母は亡くなったが
叔母の訃報はいまだ聴いていない

そういえばかみさんは微妙に音痴だった
それが彼女の魅力を損なうほどには
致命的でもなかったのか
僕も気にもとめないことがらでもあったけれど

僕らが直立歩行したのはつい先日
長い道程はぼくたちの一人旅にも似て
シンボルや言葉を生成してゆく

環境に適応し同等の対価を得ることが生の基本だ
それ以上もないしそれ以下もない

クリスマスキャロルが十二月を覆い始める
電飾された街に今日も仕事のために繰り出す

クリスマスイルミネーションが嫌いではないのだ
今日もガールズバーのまえで
盛り上がったり抱き合ったりする

男女の夜をすり抜けて走る
そんな
クリスマスが嫌いなわけではないのだ









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