時代錯誤/keigo
 

場末の酒場はもう流行らない
あるいは明日には無くなるかもしれない

明美は艶めかしく客に媚びつつも
そのむなしさを持て余す
今日は比較的客足がよくないようで少しは楽だ
悟がカウンター席の一番端の方に独りで座り
ツマミに迷い箸を向けている

場末の酒場はもう流行らない
あるいは明日には閉めるかもしれない

ーアケミさん、元気ないね

悟が視線を投げかける
どうしようかと思った
いつもハイボール一杯で長々と頑張る悟
不器用で
人の良さそうなところが
10年前に失った夫にどこか似ている
家の事情から営業畑で生計を立ててゆくことを決心したらしいが
どう考えても
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