オフィスワーカーの情景(四作)/乾 加津也
をおろした
電話が終わった頃合いに
わたしはわたしのメモ書きを鈴木くんに手渡す
すると鈴木くんの顔が見る見るうちに溶けはじめ
鈴木くんは人ではなかったことが誰の目にも明らかになった
ひら、ひらひら
乱雑なメモ書きが
鈴木くんの上に舞い落ちた
ホウレンソウ
登場人物の多い
業務上の不祥事と
これに対処した状況、及びその理由を
怒り心頭の上司に伝えるのは至難だ
主語は何だ、おまえは何が言いたいんだ
つくづくという風に
あいつは日本語がわからない
そんなはずはないのだが
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