百獣/千波 一也
 
ぼる獣とむくなる獣

すべて
滞りなく滞って
余すところなく余して
百獣は呼ぶ

すべて
揺るぎなく揺らいで
寄る辺なきを寄る辺として
百獣は呼ぶ

すべて
予定どおりにひと粒ずつの
大いなる混沌の一瞬のその百獣を
百獣は呼ぶ

へつらう獣とむれなす獣
ただしい獣とむなしい獣

永遠の淵に隙間に奥底に
百獣は在る

まばゆい獣としずかな獣
にごれる獣とすなおな獣

軸と軸とが交わって
虚無と虚無とが交わって
生まれつづける滅びの王座に
百獣は在る

とらえる獣とかこいの獣
けだかき獣とかよわき獣






戻る   Point(4)