動機/涙(ルイ)
 
す そこはかとない不幸せな空気感が
私の胸をひどく締め付けました
静かに淋し気に笑うその表情には
まるですべてを悟りきったかのような諦めがにじんでいました 
こういう感じの人を私は よくよく知っているような気がして
思い出そうとしてみたけれど
うまく思い出すことができませんでした


ふいに西風が 私の髪を乱しながら去っていきました
瞬間 「たすけて」という声が聞こえたような気がしました
誰に届くこともないほど心細く 弱弱しい声でしたが
確かに聞こえたのです
その人の声です きっと いえ多分 間違いなく


この世に多少の未練はあるものの
生きることへの執着も極度
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