「穴」/即興ゴルコンダ(仮)投稿/こうだたけみ
穴番の業に因るのでございます。穴番ぱ押し並べて勤勉な者が多く。落ちたと思えぱ受け止めせり上げ。穴など意識させないのが手練れとされるのでございます。しかしながら我が国でぱ人口減に伴い穴番も減少傾向。ぴとりで十も二十も穴を任された日にぱ見落としもございましょう。そのまま忘れられ忘れ去られ。そうして真っ逆さまに私の落ちた穴もまた。見捨てられた穴のぴとつでございました。闇に浮かぷ小さな星に見えるもの。それが私の落ちた穴の入り口。早々に観念した私がのたれ死ぬのを覚悟したとき。一瞬星が陰り何かが降ってくる。コロコロゴツンと膝に触れたのぱ一本の缶ジュース。それからというもの椅子に車に家に人にと後から後から降ってきて。それをパズルのごとく組み立てるうちに。穴のなかにぱ街ができたのでございます。煌々と電飾の点り続ける穴の底の街。太陽のない私の作り上げた街。ここにぴとつだけ足りないものがございます。お立ちあいのうちに穴番ぱいらっしゃいませんか。
※歌舞伎十八番「外郎売」をモチーフにしています。
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