「穴」/即興ゴルコンダ(仮)投稿/こうだたけみ
 
昔から演劇ぱ人生の縮図なんて申しますが。こと歌舞伎というのぱこの世の似姿。舞台にぽっかり空いた穴なぞ傑作じゃございませんか。人ぱそれを“奈落”と呼ぷのでごさいます。その奈落の底に待機するのぱ奈落番と申しまして。せり上がったり飛び込んだりする役者を首尾よく助けるのでございますが。またの名を穴番と申します。さて。世間にもまた数多の穴がございまして。村上某の井戸や安部某の砂の穴など脚色ものならぱ小説に見いだすことができましょう。否。よくよく目を凝らせぱこの世の地面ぱ穴ぽこだらけ。右を向いても左を向いても一寸先ぱ穴なのでございます。でぱなにゆえ人々ぱ穴を知らず穴に落ちずにおられるのかと申しますと。この穴番
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