「メビウス」/桐ヶ谷忍
 
長く白い廊下を歩いている
窓のない、一人分の幅しかない廊下を
私はただ延々と無言で歩いている

平易な路程ではなかった
ある時は出口を求め走りに走り
またある時は壁にすがり壁を壊そうと叩き体当たりし
幾日も屍のように横たわっていた事もある

けれども結局
廊下は変わらず続いているし
私は歩いていかなければならなかった
出口があると
信じて

廊下の壁越しに
何度か他人の気配を感じることがあった
彼らはどのような路程を歩んでいるのだろう
彼らの行く道に窓はあるのだろうか
出口は見えているのだろうか
独りなのか連れ合いがいるのか
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