「メビウス」/桐ヶ谷忍
長く白い廊下を歩いている
窓のない、一人分の幅しかない廊下を
私はただ延々と無言で歩いている
平易な路程ではなかった
ある時は出口を求め走りに走り
またある時は壁にすがり壁を壊そうと叩き体当たりし
幾日も屍のように横たわっていた事もある
けれども結局
廊下は変わらず続いているし
私は歩いていかなければならなかった
出口があると
信じて
廊下の壁越しに
何度か他人の気配を感じることがあった
彼らはどのような路程を歩んでいるのだろう
彼らの行く道に窓はあるのだろうか
出口は見えているのだろうか
独りなのか連れ合いがいるのか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)