タンス/島中 充
に燃えて、炎の山となって
それが、桜とか、撫子にたとえられた 死にざまだった
あたしは、こうして生きのびて、それだけで幸せ
あなたを育てて、それだけで幸せ
あなたが子供の頃、かくれたタンスは
見合い結婚の折、あたしが持って来たものだ
安普請だと思いながら
腹がへったと泣くから
洋服を売り払って
せがむから、あなたの物ばっかり詰め込んで
あたしの人生に似ているだろうよ
もっとゴージャスなタンスが欲しかった
彫刻が施してあるような
あたしのために 何もしてくれないくせに
新しいタンスにも自分の物ばっかり
どっさり抱えてきて、あなたは言ったのだ「タンスばあさん」
「タンス
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