贅沢/千波 一也
 


読みかけの本を開くと
こぬか雨の匂いが
した

ひさかたぶりの文字たちは
指さきにそっと、重たい


夏の終わりはいつも、そう

ひっそりと濡れて
いる


空高く
青が満ちれば満ちるほど

どこへも去らない
温かな寂しさが
しとしとと

降る






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