今日のこと/床
名前のない子供が
後ろから話しかけてきた
かたんかたん
電車はどこまでも
行き場のない子供と
片道切符のわたしと
だれかと
おんなじ空の下で
かたんかたん揺れている
何かを探しているのか
あるいは探されているのか
誰もしらないけれど
子供の背中に声を落とすほど
大きくはなかったので
私は「遠江」という駅でおりました
雪に埋もれた地面から
温かな風と緑色が見えるのは
もうすぐだと
隣にいたあなたに聞きました
ずっと会いたかったあなたに
こんな場所でまた会えるなど
おもってもみなかったから
帰るとき
一冊の本をもらう
きっといつかこの本と
私があなたという場所に
たどりつけることを
約束できたのです
家に帰ると妹が壊れたカップを直していてくれて
壊れたものも直せるのだと知ったので
今の彼と満月の下で
今日の出来事を
はなす約束をしました
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