空似/やまうちあつし
 
君には誰かの面影がある
たとえば五月の風のような
たとえば素直な犬のような
ほとんどはじめて会ったのに
なつかしい気持ちがする
昔の画家の絵のような
どこかで聴いた歌のような
思い出そうと首をかしげる
秋の星座の一部のような
神話の中の魚のような
僕が愛した誰かのような
僕が憎んだ誰かのような
けれどもきっと気のせいだろう
君は誰にも似ていない
だから笑った
テントウムシが心にとまって
君に捧げる詩を書いた
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