八月の欠片/nonya
わたしの安っぽい真実
浮き足立った今日を
いくら繰り返しても辿り着けない
わたしのあした
遠ざからない昨日を
いくら眺め返しても見つからない
わたしのわだち
UTSUWA
小さすぎて
すぐに溢れてしまう器
ヒビが入っていて
いつも漏れてしまう器
そんな出来損ないの器を
人と呼ぶのなら
際限なく注がれるのは時で
底に辛うじて残るのは
滓のような後悔
RASEN
何かに熱中している時の
ちょっと尖った唇の形も
好きだったけれど
見た目ほど器用ではない
細くて長い指の形も
好きだったけれど
本当に欲しかったのは
君の中の螺旋
君の中の柔らかな設計図
MOUSHOBI
あらゆる雲を排除して
空が真夏を熱唱する
草花は項垂れて
鳥の囀りは蒸散して
聴衆は身動ぎもしない影だけ
あらゆる朝を排除して
夜明けは真昼に接続された
炎天下の庭に水を撒く
君の溶けかけた肩越しに
架かった小さな虹だけが
略奪された朝への
ささやかな抗議
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